宣伝チラシを改めて見て、褒め言葉として心から思う。
この作品を宣伝営業した担当の、苦労と熱意が忍ばれる。
行動圏内の劇場にセカンドランで来たので、見に行った。
驚いた。
原作の方を読んでないから、
まったくの映画だけを見た感想で、
およそ的外れかもしれないが、
ただれた心の持ち主が書き残しておきたい。
ネタバレ全開なので「続きを読む」からどうぞ。
もちろん、性的な意味でのフロイト的な意味付けもあるかもだけど、
それよりもユング派だよ。
ユング心理学的モチーフ、不勉強な私が見ても
河合隼雄「昔話と日本人の心」的シンボルが、
これでもかと溢れかえってる。
ひと目見て「見るなの部屋」を連想させる森の入口。
頑なまでに表層意識で処理を図る主人公の少年と、
深層意識そのものを見せる、もう一人の主人公の女性。
少年が執着する、お姉さんのおっぱいは、
どこをどう見ても女性性の強調で。
合理的解釈と不合理の間に存在する、森と<海>。
少年の周りには無邪気なままの子供と、子供と大人の狭間に立つ同級生。
偉くなろう、早く大人になりたい、などと
少年に与えられてる役割の自我が求めるそばには
愚者や老賢者に太母が寄り添って。
老賢者であるところの主人公の父が少年に与えた、
袋を裏返す助言は、表層意識と深層意識の入れ子関係か、
それともそれらの入れ替えか、水底での繋がりの示唆か。
女性の乳房そのものな双眸の山がそびえ、
そして物語の根幹を成す魔女であり、グレートマザーの
心象風景が美しくも儚く描かれていて。
一度見ただけでは頭の中を通り過ぎてしまうような
拾い忘れた暗喩やシンボル、まだまだ沢山あることだろう。
もう一度じっくり見て感じたい。
お姉さんはこともなげに少年へ投げかけるけど、
精通や初潮を迎えてないような少年少女たちに
それをやらせてしまうのが、とても意地悪い。
悪い監督だ。
普通に見れば、
何もかも知り尽くしたかのようで、何も知らない少年と
何もかもを飲み込んだミステリアスな女性との
ボーイ・ミーツ・ガールで、少年の一夏の成長譚。
一皮むけば、ユング心理学の擬人化作品だ。
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パンフレットを眺めて、スタッフの若さに驚いた。
京都アニメーションの山田尚子監督や
「ノーゲーム・ノーライフ」「宇宙よりも遠い場所」の
いしづかあつこ監督もお若いが、
本作の石田監督は1988年生まれとは。
この世代が如実に才能を発揮してきて心底嬉しい。
フェティシズムの塊みたいなカットばかりなのも好感。
こんな作品、東宝配給でよくやれたな!! と、感嘆したが、
思い出してみれば、「聲の形」と「君の名は。」が大ヒットした一昨年、
東宝と松竹のアニメ担当がTwitterで
お互いに激励しあってたような記憶がある。
なるほど、その流れも踏んでるのか!
こういう作品が、もっともっと制作されるだけのチャンスと
観客の受容力が拡がればいいな。
ポストジブリを誰が握るのか、個人的に興味があるが、
また一人、名乗りを挙げた感がある。
今年も邦画は豊作だ。
「リズと青い鳥」「若おかみは小学生!」
「未来のミライ」「中二病でも恋がしたい!」
実写だと「カメラを止めるな!」「モリのいる場所」もか。
今敏監督もこの中のラインナップに加わっていればと
ときどき感傷に浸るが、そんな事も言ってられないほど豊作だ。
良い時代に生きられて嬉しい。
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