2016年7月13日水曜日

テーマパーク京都

日帰りぐらいの遊び先に「京都」という選択肢が増えたのはここ数年のことだろうか。
中京圏で思春期を過ごした者のご多分に漏れず、
遠出の遊び場といえば花の都東京方面にしか目が向かなかったが、
それまで修学旅行でしか行ったことがなかった京都に
ご縁ができたのは10年ぐらい前のこと。
妻がお世話になっている大阪能勢の自転車屋に
我が家から車で行くときは京都市内を横断するのが
当時は一番の近道だったからだ。


せっかく京都を通り過ぎるならどこかに寄って遊んでいきたい、
しかし当時は日本史にもあまり興味がなく、
京都の街なかの知識もさほど蓄えてなかったので
いわゆる観光地を足早に二、三ヶ所ほど見て目的地へと急ぐことが多かった。

そのうちに安くて美味しい京都グルメの存在に気づく。
豆腐屋が経営するお茶屋の千円以下で食べられる湯豆腐や、
地元の人が普段遣いしてるおまんじゅう屋の和菓子に
茶房で提供されるお抹茶とお菓子、
実は銘店が多いパン屋やB級グルメなどなど、
行列もできるが確かに美味しい店が粒ぞろいだった。


食事に釣られて街なかをてくてく徒歩で動き出すと、色んな物が見えてくる。
駐車場から目的地までの道脇にある小さなお寺に
私でも知ってるような重要文化財の仏像があったり、
なんの気なしに歩いてた路地の角が歴史的史跡だったりと、
なにしろ千二百年の歴史ある古都で
ここ数百年は戦火にも焼かれてないから
地層の積もり方が半端ない。
ガイドブック片手に調べ始めた時にはすっかり京都にはまってた。


ここ数年は博物館や美術館で催される展覧会にも興味が湧いている。
きっかけは京都国立博物館での鳥獣戯画全幅公開を見たことで、
それまで日本美術にはほとんど興味なかったが
他の様々な日本画を見ていくうちに、
浮世絵も鳥獣戯画も狩野派も絵巻物も琳派も禅画も
それまで「日本画」の括りで一緒くたにしか見てなかったものを、
日本美術体系のなかでどのように変貌を遂げていったのか、
本流の日本美術とはどのような作品を指して
それら本流に対するアンチテーゼとしてどんなものが作られたのかを
一から学んで作品を見ていくのは、知的興奮を刺激されて楽しい趣味となった。


美味しいグルメ、至る所にちらばる名所旧跡、
年がら年中みどころに事欠かさない街。
こんなイベントだらけのスポットを
いつかどこかで経験したっけなーと思い起こしてたら
万博の雰囲気に似てるような気がしてきた。
乱暴な物言いをすれば街全体がテーマパークみたいなところである。

自分たちみたいに安く遊ぼうとしてもそれなりに楽しめる。
ちょっと背伸びすれば桁が違うような格式ある料亭でも
体験版みたいな朝食コースを味あわせてくれる。
いかなるステータスがあっても一見さんはお断りの世界もあるという、
多層レイヤーな社会も透け見えて奥深い。
それこそ千年もの間、天上人から町人まで生き続けてきた
歴史ある階級社会が今でも街中にどっしり根付いている感覚がある。

住むとなると大変そうだが遊ぶ程度なら遊びきれないくらい遊びどころがある。
世界中から観光客がやってくる街の魅力がなんとなく分かってきた。
こんな観光都市に車で片道2時間程度で行けるのは有難い。
まだまだ到底回りきれてないので気長に遊ばせていただこう。







2016年7月6日水曜日

中野テルヲ 20th Anniversary [Live160609]

東京公演も終わったのでひと月前のライブ感想を。


ソロライブワンマンを見るのは14年ぶり。
その間にイベント出演ライブを何度か見たけども、
やはりワンマンでの異色なステージ機材構成は眼を見張るものがある。

今回、目についたのは向かって左側に設置されたダミーヘッド。
ステージの現場でバイノーラル録音したところで出音には効果ないだろうし、
はてどのように使うのやら、と訝しんでたら、
その直下に備え付けられたテープレコーダーとセットになってて、
直接ループテープサンプリングが始まった。
ダミーヘッドの耳元にあるマイクに耳打ちするかのごときポーズで。
…若い子のファンが大勢を占めるようになったから出来る技だなぁ…。


そんなパフォーマンスも含めて、総合的に感じたのは
アーティストとしての若返りを目的としたブラッシュアップが効いていた。
かつての中野テルヲライブといえば、一言で言えばストイックな、
まるで客席とステージの間に薄い透明壁でもあるかの如く、
隔てられた孤室でおこなわれる音楽実験を目の当たりにしてるような印象だった。
これは2000年代の長きに渡る活動休止から復帰した直後のライブでも
程度の差はあれども受けた感想だ。
それが中野テルヲのパブリックイメージの一端でもあった気がする。

ところが、それから数年を経て久しぶりに見たライブは
観客からの反応をアグレッシブに受け止めてさらなるパフォーマンスに繋げる、
電子音楽を主体としたベテランアーティストらしからぬ
異形のコール&レスポンスが成立するステージングに変容していた。


長年の盟友や自分のキャリアより若いアーティストとの共演に加え、
おそらく制作スタンスとマッチした所属事務所と
スタッフのバックアップ体制も大きいだろうし、
そしてなにより、現在の客層を支える若いリスナー達からも影響を受けているのだろう、
間違いなく我々が追っかけてたころの中野テルヲよりも
現在のほうが若々しい表現スタイルになっている。
そしてそれはとても官能的で魅力あるステージだ。


今回のライブには久しぶりに妻を誘った。
20年前の彼女は、私よりも熱心に中野テルヲを追っかけてて、
P-MODELと中野テルヲが同じ渋谷で同日同時間帯にライブを催した
伝説のダブルブッキングではテルヲを選んだほどのヘビーリスナーだったが、
ここ数年はテルヲライブからは遠ざかっていた。
そんな妻にこそ今の中野テルヲを見てもらいたかったのだ。
終演後には珍しく興奮気味に感想を語り、
「誘ってくれてありがと」と言ったときの表情は
とても楽しそうだった。

プロミュージシャン歴30年、ソロ活動スタートからも20年を過ぎて
活動を総括するどころではなく、ますますスケールアップする中野テルヲ。
この先に拡がる創作活動にも期待。


中野テルヲオフィシャルサイト発表より転載)

Uhlandstr On-Line
IDは異邦人
Amp-Amplified
Raindrops Keep Fallin' On My Desktop
Pilot Run #4
ファインダー
フレーム・バッファ I
Mission Goes West
スパイ大作戦
Ticktack
今夜はブギー・バック
宇宙船
Run Radio III
Dreaming
虹をみた
ディープ・アーキテクチャ
Let's Go Skysensor

EN1. グライダー
EN2. Yesは答えをいそがないで
EN3. フレーム・バッファ II



ライブグッズ:20周年記念Tシャツ。
展示品を販売してくださって感謝。


2016年7月5日火曜日

生き物と個性

我が家では30kgのズタ袋に入ったウッドチップを常備しててる。
そんなものは競走馬の調教用ぐらいしか縁のなかった単語だが、
数年前から家に置かれるようになった。
元々は燃料用のペレットとしての製品らしいが、
これが猫トイレの砂代わりとして有用なのだ。

ウッドチップの上で猫が用を足すとチップが水気を吸って分解する。
匂いは木材の香りが強くてほとんど気にならない。
システムタイプの猫トイレなので分解した粉は下に敷いてるシートに落ちる。
我が家の場合は週2~3回の交換で済むし、猫も嫌がることなく使ってる。


現在は5匹の猫と暮らしてるが、年長である10歳オーバーの2匹は
猫砂を決して使うことなく、幼少から親しんだペットシーツを愛用しており、
若者組3匹がウッドチップと固まる猫砂トイレを使ってる。
逆にそいつらがペットシーツを使ってるのを見たことがない。
よくよく観察すると猫もなかなか頑固だ。

12歳になるボス格の黒猫がドライフードを食べる時は、
そそぐときにカラカラとクリスピーな音を立てるエサ箱でしか食べないし、
去年仲間入りした白猫は、腎臓が弱い最年長サビ猫専用の療養食が大好きで
自分の分を早々に食べ終わった後は、わざわざサビ猫のところまで行き、
奪いとってまでも他人の療養食をむさぼり食ってる。


実家に暮らしていた頃も犬や猫を飼っていたが
一頭飼いだったので犬や猫に個性があるとは考えることもなかった。
しかし猫を多頭飼いし始めてからは、それぞれの個性の強さに
面食らいながらも、それが大きな魅力だと知らされた。
一時期飼っていたランチュウも意外と個性があって
魚類あなどりがたしと唸らされた。


小さい頃からカエルが大好きで、図鑑を見てはモリアオガエルや
シュレーゲルアオガエル、カジカガエルをいつか飼いたいと願っていた。
だが、子どもの時分にそこらへんのカエルを捕まえては、
生半可な知識で飼おうとして結構な命を無駄にしてしまったので、
それを反省して両生類には手を出さないように自重している。

自然のままの姿が一番可愛いと納得して所有欲を絶っているが、
あいつらも飼ってみたら個性があるのだろうか。
ちょっとだけ気になる。