2019年3月29日金曜日

チープとラクの二律背反

甥っ子が中学校を卒業した。
お祝いというわけではないが一緒に青春18きっぷ旅をしてきた。
経緯はこうだ。


幼児~小学生時代はどっちかといえば、
ウェーイ系でパリピキッズだった甥っ子。
中学入学前後を境に、オタクロードへ転がりこんでった。
あれは数年前の年の瀬。
親族が集う忘年会で『コミケに行きたい』と宣言した中学1年生。
子供の戯言と受け流す空気の中で、
こりゃ面白ぇと食いつくダメ大人。
「何日目?」
甥っ子の目が輝く。『初日です』
「ジャンルは?」『東方です』
「「東方かー!w」」とハモる夫妻と中学生の会話を
謎の読経の唱和を聞くかのようにポカンとする親族。
あれ以来、甥っ子が敬語を使ってくるようになった。


あのときの話がいつ蘇って、有明へ連れてってと言われるか、
覚悟を決めながら夏冬が来るのを待ってたが、
彼の中では『自力でコミケに行こう』に切り替わったらしい。
先日の法事で会った際に、
『高校生になったら青春18きっぷでコミケに行きます』と話が出て
それじゃあ一丁、夏の前に実際に行ってみますかと進み、

> 来たる2019年8月のC96参加に向けて
> 「チープでラクな上京手段」を実践予行する旅
> チープは疲れる。ラクは出費がかさむ。
> この二律背反が成立する落とし所を実地訓練。

こんなことを銘打ち、
訓練旅行のエスコート兼保護者として同行した次第。


とは言え、鉄オタでもない未経験者の未成年に
スケジュールを組んでごらんといきなり言うのも野暮なので、
こちらで東京までの行程と帰路の夜行バスを準備し、
東京での行動や意思決定権は甥っ子先導、
道案内とタイムキープはこちら管理、という
言わばチュートリアルを用意。
今回は感覚と手段を学んでもらって、
次に自力でスケジューリングするときの
糧になればぐらいの腹づもりだ。


日の出ぐらいの時間に私鉄の集合駅で待ち合わせて
最寄りのJR駅まで行き、7時からひたすら在来線。
12時前にJR東海を抜けて熱海。
小田原から湘南新宿ラインで新宿まで向かう。
途中、甥っ子がプレイするアーケードのゲームの
全国行脚機能のスタンプ押しで小田原のゲーセンに寄ったり。







新宿からは山手線で高田馬場・池袋・秋葉原と
濃いぃゲーセン巡り。ミカド詣で。池袋GIGO。
マーブルマッドネスなんて高校生以来でプレイしたわ。






秋葉原には17時過ぎに着いたろうか。
もうキーボードもレトロゲームもご無沙汰なので
ちゃんと用事があってきたのはいつ以来だろ。

万世のカツサンドが食べたかったので本店で購入。
ついでに甥っ子にもお土産で持たせる。
ラジオ会館を上から順繰りで見てみたり、
OCMIC ZINで薄い本を見繕ったり。
レトロゲームはBEEPや濃そうな店を見たかったけど
時間も押したしスーパーポテトを覗いたぐらい。



甥っ子がここに行きたい!と推した家系のお店で晩飯。
その後は近所のスパで入浴+休憩。
炭酸泉と3時間コースがありがたい。
あとは夜行バスの時間まで東京駅でヒマつぶし。
駆け足だった。


実践してみて痛感したのは青春18きっぷで東海道本線は
やっぱり時間を食うったらありゃしない。
メインが鉄道旅とかで丸一日かけて横断し、
翌日に東京観光とかゆとりがあるなら充実しそうだけど、
移動+観光を一日にまとめるとなると、
観光の方を厳選しなくちゃな、と反省。

甥っ子の方は手持ちの選択肢が一挙に増えて、
東京が少しだけ近くなったような感触を得たようで何より。
次はカプセルホテルとか試すと良いよ。
悪知恵を吹き込む親戚。




2019年3月26日火曜日

春の諏訪旅行その三 酒池肉林

もう少し続く諏訪旅行の思い出話。

【諏訪旅行その一】
【諏訪旅行その二】

日本の食を支える発酵蔵、長野。
なかでも諏訪の町には5つの酒蔵を始めとする、
酒蔵、味噌蔵などが、今でも活況をみせる。

食の方ではそば処でもあるし、
馬肉文化も発達し、ジビエも名高い。

さらに湯量豊富な温泉まで湧くとあれば
泊りがけで遊ぶしか無かろうと、
飲んで食って静かに騒ぐ珍道中。


まずは茅野駅から車で数分の、信濃路遊膳そばのさと。
こちらは「瑞萌千本杵搗製法」という製法で、
蕎麦の実を甘皮付きのまま低温水に浸けて
専用の機械で皮ごと荒搗き。そして手打ちにするという、
「どうづきそば」なるそばを出してくれる。


荒搗きらしく粒状感が残るそば。
口にすると、十割とは思えぬモチモチ感に加わるプチプチ食感。
対話しながら食べる系のそばだ。なるほど。

食の求道者である同行者の一人は
どうづきそばを食べ終わり、間髪入れずにもりそばを注文。
一口すすらせてもらったら、これがどうしようもなく美味い。
ふええ。
このポテンシャルを踏まえた上でのどうづきそばかぁ。
奥深しそば処。


夕食は同行者のおすすめで馬肉すきやき。
かつて上諏訪に訪れた際の思い出の味とのことで、
ひなびた繁華街の路地を曲がったところにある隠れ家的な店。

テーブル2つにカウンターの店内は貸し切り状態で、
まずは馬刺しを赤身と霜降りの二種類。
…赤身ウメェ。霜降りも溶ける。
血生臭くもなく、これは美味しいわ、と思ってたら、
カセットコンロと鉄鍋が出てきてお肉と野菜ドーン。


…うめぇ。
牛、豚、鶏、羊、鹿、鯨。それぞれの肉に
独特のクセがあるのが普通だと思ってたけど、
ここの馬にはそれが無い、食べるとスルスル消えていく。
これは贅沢だ。あー。
4人前をあっという間にたいらげてご馳走様。


翌日は地元で愛されるラーメンを、と
いうことでハルピンラーメンへ。
祝日の昼下がりだけあって賑わっていた。

地元のおばちゃんたちが働く厨房からでてきたのは
濃厚とあっさりの中間ぐらいの
程よいスープに中細の縮れ麺とチャーシュー、
そして海苔とメンマとトッピング辛ネギ。
あっさり優しい豚飯が引き立て役として仕事を果たす。
なに食べても美味いな諏訪。



-----------
話変わって温泉巡り。
1月の日記にも書いた住宅地の秘湯、大和温泉と、
諏訪湖湖畔の名湯、片倉館に立ち寄ってきた。

まずは片倉館。
戦前に製糸産業で財を成した財閥が
「地域の福利厚生と社交場を」ということで建てた
筋引レンガとレリーフとステンドグラスの、
見るからに金がかかってそうな建築物。


その中の目玉は100人が一度に入れるという売りの千人風呂。
プールみたいで確かに広い。
我々が入ったときは6~7人ぐらいか。
女湯の方はほぼ貸し切りだったとか。
心持ち熱めの温泉はサラサラでなかなか心地よい。
そして中で立つと胸まで浸かる深い浴槽。


翌日は大和温泉。
前回とはルートが違い、諏訪市役所側からアクセス。
こちらのお湯は完全に貸切状態。
お客さんがいなかったせいか、前と比べて
やや温めの硫黄泉にたっぷり浸かり、
体の芯まで温まる。温泉巡り楽しいわ。
みんなで大満足。


----------
食べ物、お風呂ときたら、次は飲んだくれ。
上諏訪町の街道沿いにある5つの酒蔵、
舞姫・麗人・横笛・本金・真澄が共同で
「諏訪五蔵めぐり」というキャンペーンをおこなってる。
所定の料金を払ってガラスぐい呑・提げ袋・台紙を買い求め、
それを持って各酒蔵を巡ると試飲ができるとのことだ。




一か所で5種類を確実に試飲できて、
蔵によっては更に+α。
単純計算でも4合は飲めるとのことで魅力的。なのかな。
下戸だから仲間の飲みっぷりを眺めてた。

スタンプラリーに期限はないとのことで、
今回は二日に分けて蔵巡り。
同じように巡ってる他のお客さんの話を聞いても
やはり泊りがけで五蔵まわってる人たちがちらほら。
初日に三蔵、二日目に二蔵と回ったが、
数をこなすにつれて皆ほろ酔い加減になってゆく。

それでも初日は良かった。打ち止めがあったから。
二日目がすごかった。
最後に入った蔵は、試飲用の冷蔵庫が置いてあり、
好きなだけ飲んで良いよのドリンクバー状態。
仲間が静かに壊れてく。

酒を飲んで人が壊れていくのを観察してるのは楽しい。
私はあんなに飲んだら死ぬ。

お酒を楽しんだ後は気になった酒を買い込んで。
リュックに一升瓶二本背負ったり、
両手に酒瓶と糸寒天を抱きかかえながら
友達は特急あずさで帰っていった。

我が家の方は一升瓶を妻の実家に送りつけて、
さらに翌日、足を伸ばした甲府で
一升瓶ワインを何本も買い増してた。
我が家は今、酒瓶だらけである。




2019年3月24日日曜日

春の諏訪旅行その二 テクノロジーの素朴

一泊二日で諏訪地方を観光した春旅行。

【諏訪旅行その一】

【2:藤森照信建築群とベルビア時計台】
今回の個人的な目玉がこちら。
建築史家で建築家の藤森照信が設計した茶室と、
デビュー作である神長官守矢史料館が
見られる場所があると知ったのは、
前回の諏訪旅行から帰り、復習してたときだった。


藤森氏と言えば、芸術家・赤瀬川原平の
80年代以降の諸活動を語る上で欠かせぬ人物の一人だが、
出身地が茅野とは知らず。
設計した茶室が、実家の畑の一角に建築され、
内部は原則非公開だが(イベント時には公開あり)
外からの見学はいつでもできるとのこと。

さらに隣は、神代の時代から諏訪に住み、
諏訪大社上社の成立以後も神長官として
この地を永く治めた歴史を持つ守矢氏の敷地で。

守矢氏伝来史料の保存展示する史料館を
茅野市が建設するにあたり、建築史家だった
「お隣さんの照信ちゃん」に白羽の矢が立った次第。
その経緯は「タンポポ・ハウスのできるまで」に詳しい。


こちらは公共施設なので内部も見学できる。

なにはともあれ、
国内外にファンを広く持つ藤森照信建築の代表作が、
茅野で幾つも見れるという。
これを見逃す手はない。

駄文なんかよりも写真ですよ。
















上社の本宮と前宮の、ちょうど間に位置する神長官守矢史料館。
守矢氏の敷地内にあるので、手前の駐車場で停車して歩く。

短く刈り込まれた笹庭の奥には、手前へ緩く下る石葺きの屋根と
軽く焦げ目が入る木壁。それと荒々しく屋根を貫く柱たち。
上部には土壁を思わせる黄土色も見える。


外見観察だけで興奮する一同は、
ひとしきり写真を撮り終えてから入場。
わらを練り込んだ土壁を模した鉄筋コンクリート、
優しい曲面を描く吹きガラスの窓から光も差し込む。

入場料を受け取った係員氏が事務所から出て、
内部展示を一つずつ事細かに説明してくれる。
それなんて贅沢なサービス。
神長官と諏訪大社、それと武田家との関わりなどが
おかげで一通り頭に入る。





我々がキャッキャウフフと外観で盛り上がってたのも
丸聞こえだったようで、藤森建築についても解説が入る。
さらにお手洗い脇の窓を開けると、
その先には高過庵がフレームカット。
「好きなだけ見てきてヨシ」と許可を得る。
よっしゃあ。


守矢氏の敷地を抜けてあぜ道を進むと、
先程から見えていた高過庵の手前に、
10mほどの柱の間にワイヤーで吊るされた
横長の土団子みたいな巨大な固まりが浮かんでる。
空飛ぶ泥舟だ。
うおおおお。
そして高過庵のすぐ横に、薄い四角錐を寝かせたような低過庵。

もう全員夢中で写真を撮ったり見入ったりする。
入りたい。揺れてみたい。
いやぁこれは、体積とか質感とかディテールとかが、
それまで写真で見たイメージから
生で見ることでアップグレードされた思いだ。
すんげー。


建築物をひとしきり眺めると
周りの景色との溶け込み具合も見えてくる。
遠くには雪が残る南アルプスの稜線も入り、
眼下に茅野の街が広がってて。
ソーラーパネルの借景も意外と合う。


足元では柔らかい枯れ草の下から
新緑のふきのとうも芽吹いてて、春も顔を出してる。
快晴の空の下でこれらを見れて良かったなあ。
堪能した。もっと写真撮れば良かった。
次の目標は中で催される茶会に列席だ。
茶道習おう。


そして、平沢進マニアとしての旅の目的、
茅野駅前ベルビア。
こんなに早く再訪できるとは思ってなかった。

集合時間前にベルビア開店したタイミングで一回。
諏訪大社上社と藤森照信建築群を観光してからもう一度。
勝手知ったるもので、録音機材も回さずに気軽に聞けた。
カメラすら向けなかったので写真は前回訪問時のもの。

二度目なので時計のディテールも詳しく見られる。
白樺を覆う細い光ファイバーが、演奏中には繊細に輝き、
枝に止まる不思議なカラーリングの鳥もしっかり見る。
ここでしか流れない、平沢さんの忘れ去られたメロディを、
二十年来のヒラサワ仲間達と一緒に聞けるのは、
ひとつの思い出となるくらい嬉しい。





高さ5m近くのからくり時計は中央に白樺、
それを四本の金属柱が支えて、四面の時計盤が上部に置かれ、
その上には重ねガラスで作られた緑の山。

白樺と山なみは茅野の自然を表現しているとして、
銀色の柱が少し目立つなあ、精密機械産業のモチーフかな。
とか思っていたけど、ようやくピンときた。
御柱だ。
そうなると、これは精密機械産業も含む、
茅野市の要素をコンパクトにまとめあげたアートだ。


諏訪大社を拠点に一巡りした、
神長官守矢史料館、藤森照信建築群、
そして茅野ベルビア時計台。

興味本位で見てきたものばかりなので
もちろん表立って共通する関連性は無いけれども、
それらの根幹には諏訪大社に端を発する、
この地の人々の心深くに宿る
宗教的、呪術的なシンボルのような何かが存在し、
今日見てきたものたちは、
それぞれの作家、開発者、職人などの依代を濾過して
象られたカタチなのかも、…などと、こじつけてしまった。

諏訪の地の心が露出してるのかもしれない。

【諏訪旅行その三】





春の諏訪旅行その一 諏訪大社二社四宮めぐり

春間近の諏訪を旅してきた。

平沢進マニアにとって、諏訪での最優先目標といえば、
茅野駅前ベルビアの「ヒラサワ作曲時計台」だが、
それだけで済まない魅力が、まだまだ諏訪にはある。
諏訪大社、温泉、酒蔵、奇怪建築、美味甘味。
同好の友達を誘い誘って、旅行の計画を組んでみた。


それぞれ違う地方に住む今回の旅行メンバー。
各自が気になる諏訪スポットを挙げてブレストし、
プランが固まったところでスケジュール決定。
当日はそれを頼りに、各スポットを巡りつつタイムキープ。
これがラリーツアー感覚でなかなか楽しい。
付き合いが長く気兼ねしないメンバー故に可能なスタイルかも。

諏訪まではそれぞれの交通手段で集い、
現地では我が家の車に乗り合わせて観光してきた。
カテゴリごとに振り返りたい。


【1:諏訪大社 二社四宮めぐり】
ここ数年の日本美術への興味から、
寺社仏閣にお参りする機会が増えているが、
知識は蓄えてるものの、信心深い方じゃない。

なので、諏訪大社については
「諏訪の鎮守様」「御柱祭」「御神渡り」など
トピック程度しか知らなかった。

同行した友達の一人が去年、
諏訪観光と上社本宮参拝をしており、
各所でガイド役を務めてくれた。ありがとうございます。


まず諏訪大社は、上社と下社の二社、
さらに上社は本宮と前宮、下社は春宮と秋宮の、
それら二社四宮で構成されており、
両社は直線距離にして最大10km以上離れている。

各宮には本殿が存在せず、
御神体は上社が御山、下社が神木(春宮:杉、秋宮:櫟)。
七年に一度の御柱祭で切り出された御柱を
四方に建てて神域とする。

各宮には拝殿があって、そこでお参り。
それが諏訪大社についての基礎知識。
今回は二日に分けて、二社四宮のすべてを巡った。


・上社本宮

茅野駅から移動開始し、上社本宮を目指す。
鳥居をくぐり境内に入ると、本殿と見紛う拝殿が目に入る。
その両脇には、樹皮を剥がれて裸で並ぶ
二つの御柱が天を衝く。
我々の場所からは見えないけども、奥にももう二本立つという。

粗野な姿で立つ御柱の存在感に、まず圧倒される。
他の神社とは確かに違う、諏訪大社最大の特徴だわ。


神楽殿や神馬舎、土俵に回廊などなど、
並ぶ建築物を通り抜けて拝殿でお参り。
合わせた掌の向こうに山裾が広がる。
なるほどなるほど。
これは確かに御神体を感じる。

上社本宮の印象は、長い信仰と格式が残る、地方の大神社。
ここでの印象を刷り込み基準として
他の三宮を比べることにする。


・上社前宮
上社本宮から細い山道に沿って移動。
小高い山裾の拓けた土地が目的地。

ここがまた、びっくりするほどプリミティブ。
境内の脇には小さな川が流れ、
こじんまりと古びた拝殿を、やはり御柱が囲んでいる。
「素朴」「原始信仰」という単語が、頭の中で回る。
あまりの素朴さに一回り見てお参りし、そそくさ次の目的地へ。


しかし、見どころが無いわけでは決して無く、
ここへ来る前に立ち寄った神長官守矢史料館で
学んだばかりの知識との相乗効果により、
狩猟民族の原始信仰がいかにして諏訪神様へと変わったのか、
考えさせられる余地がたくさんあった。

前宮へのお参りには合わせて神長官守矢史料館の観光。
これらのセットをとてもお薦めしたい。


・下社春宮
下諏訪町へ移り、参道の入口を歩く。
しっかり組まれた石垣と石鳥居が目に飛び込む。

境内を歩くと参道の中央には神楽殿。
その軒先に吊るされる極太のしめ縄。
本殿と憚っても差し支えないくらい立派だ。
拝殿の屋根も檜皮葺で目立つ。これはお金かかってる。

上社よりも深い森の中でひと際目立つ、皮剥きの御柱。
諏訪神様は荒々しいのだなとの直感を一層確信させる。


春宮の脇を抜けた先の田園に
万治の石仏という巨大な磨崖仏あり。
神仏習合の時代の名残なのだろうか。
素朴なデザインだけど圧倒的スケール。パない。

・下社秋宮
ここだ。
ここが一番の長者だ。
門前町から境内から色んなものが溢れ出てる。

上手く言えないけど、至れり尽くせりな感じで、
なんとなく京のお社みたいな雰囲気を感じる。
神楽殿の屋根造りが「三方切妻造」って、どんな造りだ。
裏に回って現物を見て頭の理解が追いついた。うーむ三方切妻…。

原初的な雰囲気で荒々しかった諏訪神様が
時代を経たら余裕が出来てスタイリッシュになってってた。
立身出世。


春宮でも感じたが、
下社のほうが明らかに観光地してる。

上社と下社には社格の序列も無くて、
実質的には別神社とは聞いてたけど、
懐の事情は色々とゴニョる話だな、きっと。

この前の中央線ダイヤ改正で
下諏訪駅への特急あずさ停車本数激減というニュースとか
その意味がなんとなく分かってきた。
全部巡ってそれぞれ違いを体験してこその感想かなあ。
いろいろあるのね。

そういえば諏訪の町の到るところで見られる
小さなお社も、それぞれ四方を可愛い御柱が囲んでた。
「四本の柱で空を支える」とはこのことか。
たんと吹け風よ。


二日かけてじっくり巡ってこそ感じる価値が
確かにあったような気がする。
なるほどなあ。

【諏訪旅行その二】



2019年3月15日金曜日

青春18きっぷ帰り道の旅:法隆寺

前回のあらすじ:
タダ同然で手に入れた青春18きっぷで
どう考えても安すぎるうどんとカキオコ食べてます


日生の駅を12時前に出発。
4駅ほど大阪方面に進んだ播州赤穂駅。
馴染みが薄いけど、この駅は要衝らしくて
調べると時間帯によって野洲や長浜まで直通する
新快速が走ってるらしい。
この時間帯は姫路止まりなので姫路で乗り換え。


青春18きっぷシーズンだから、お仲間が多いかと思ってたが
そこまで見かける感じでもない。
JR西日本らしいボックスシートに座り昼寝しながら大阪へ。
乗り換えの途中でヒロタのシューアイスを補給しながら
大和路快速で法隆寺駅に行く。着いたのは14時半。


歩いて20分ぐらいか、畑と住宅街を縫って進み境内へ。
奈良の都から少し離れてるので少し縁遠い。
入ってすぐの西院伽藍には、向かって左に五重塔、右に金堂。




五重塔は建物ももとより、内部に安置される塑像群が何とも素晴らしい。
写真で何度も目にしたが立体造形として見ると不思議な空間だ。
もっとしっかり見せてほしいなあ。
金堂の釈迦三尊像も、後の平安鎌倉スタイルとは違いのある
シュッとした造形がオリエンタル。

日本の戦後から高度経済成長時代に発行された
最高額紙幣に描かれた肖像群が祀られている、
由緒あるお寺だけあって
御所や名刹とはまた違った格式を感じるところだ。
拝観料もダントツだけど。



西院伽藍から大宝蔵院を見て、塔頭寺院を抜けて東院伽藍へ。
いわゆる夢殿が建てられてる方。


八角円堂を訪れる観光客は少なめで静かだが、
どこからか小刻みのリズミカルな音が響く。
お堂からではなく外の枝垂れ桜だ。
よく見ると一羽のコゲラが幹を啄いてた。
こんなところにもいるのね。しばし見入る。



来た道を戻り、奈良方面へ。
乗り換えの奈良駅で柿最中を買い食いして今度はみやこ路快速。
京都まで出て夕食を摂る。
新福菜館が頭をよぎったが、さすがにカロリーオーバー。
伊勢丹でなにか弁当でも、と思ったけど
欲しいものが見つからず。
5513蓬莱の豚まん買ってホームで食べるか、と思ったら
イートインコーナー発見。
おひとりさまでも気軽に入れるナイススペースだ。


さすがに疲れてきたので帰る。
米原まで行き、豊橋行きに乗り、金山で名鉄へ。
22時過ぎには帰宅、合計で約480kmほど。
西の方はボックスシートの新快速がたくさん走ってて
かなり快適に旅行できた。
あとはやっぱり往復青春18きっぷはキツいと改めて思う。
旅は行きっぱなしが良いなあ。